cinema staff『SOLUTION E.P.』
インタビュー

(取材・文 / 沖 さやこ)

■「YOUR SONG」のような曲を作ったとしても、もともとの核がなくなることはない

――『SOLUTION E.P.』は『WAYPOINT E.P.』から約1ヶ月半というインターバルでのリリースです。今年下半期のcinema staffは制作やライブ、プロモーション、撮影などなど……かなり過密スケジュールで。ここまで激動なのはバンド人生で初めてでは。

三島 ありがたいことに忙しくさせてもらっています。この2枚のEPはNHKドラマ『ガッタン ガッタン それでもゴー』とTVアニメ『遊☆戯☆王ARC-V』のタイアップありきなんですけど、どちらも制作チーム側からのオファーだったので、やることを与えてもらった感じがあって。僕は自発的にやろうとするといろいろ考えこんでしまうタイプなので、考える暇もなくどんどん活動をしていくのは割と性に合っているのかなと、ここ半年はすごく思いましたね。このテンポ感での活動は……しんどいけど良かったとは思います。

辻 最近はいろんなことがバタバタでかなり大変で疲れますけど、本当に濃い毎日です。

飯田 今年の前半は『blueprint』(2015年4月リリース、4thフルアルバム)にまつわることに集中して、後半はあんまり記憶がないくらい……ただひた走る、みたいな。だからこの活動の結果が出るのは来年かなと思って。いまはとにかくラジオ出演なども含めて「目の前にあることにひとつひとつちゃんと向き合ってやっていこう!」という気持ちでしたね。

――かなりお忙しい状況というのは先月皆さんからお聞きしていたので「プロのロックバンドとして、この状況でライブは大丈夫か?」と危惧していたのですが、10月末にライブを観たときにクオリティを高い状態で維持していたので安心しましたし、何より感心しました。

飯田 10月11月と怒涛のスケジュールで、なかなかいつもどおりスタジオに入れなくて。だからメンバーそれぞれが「どういうライブをしよう?」とイメトレみたいなこともしました。やっぱりこの状況で久し振りの曲や新曲を演奏するのは怖いんですけど、来てくれるお客さんのことを考えるといつも同じセットリストではやってられない。それに、これでいいライブができないと「お前ら練習してないじゃん」と言われるだけだと思うんですよね。「それだけは絶対させへんぞ!」と思って必死に全力で戦うような感じでした。

久野 人間やればできるんだな……と思いました。結果ライブもすごくいい感じにできてるし音源も良く出来たので、結果オーライ。これが1年続いたらきついです(笑)。とは言っても仕事があるのは本当にありがたいことなので、今回はこれで良かったなと思ってます。

――『SOLUTION E.P.』は『WAYPOINT E.P.』と趣向の違う作品になりました。三島さんは公式コメントで今作について「cinema staffの現在の動の部分を強調した作品」「ソリッドかつエッジーなバンドサウンドは僕たちの持ち味であり、今後もバンドの核となる、というひとつのプランを提示できた」と発言なさっています。

三島 『WAYPOINT E.P.』の方針が決まってから、『SOLUTION E.P.』の方向性が決まっていって。「YOUR SONG」はプロデューサーが入ってピアノが入って、悪い意味ではなく振り切った、新しいことへのチャレンジだったんですけど、今回は割といままでのcinema staffがやってきた音楽性の延長線上+α。「YOUR SONG」みたいな曲を作ったとしても、もともとの部分を捨てたわけではなく維持したままなので安心してください、というか(笑)。「切り札」はプロデューサーも入っているしアニメありきなところもあるんですけど、あとの2曲は本来のハードコアパンクスピリットのいちばん沸々としているところで作ったので、今後ここがなくなることはない、ということですね。

――「切り札」は『遊☆戯☆王ARC-V』制作チームからのオファーなんですよね。久野さんも中学生時代に『遊☆戯☆王』の漫画を読んでらっしゃったとのことですし、歴史が長い作品からそういうお話が来るのは嬉しいことでは。

三島 『遊☆戯☆王ARC-V』のプロデューサーさんが、TVアニメ『進撃の巨人』後期エンディングテーマになった「great escape」を聴いて「是非cinema staffでオープニング曲を」とオファーしてくださって。嬉しかったですね。もちろん昔の『遊☆戯☆王』は知っていたんですけど、『遊☆戯☆王ARC-V』は馴染みのない作品だったし、『遊☆戯☆王ARC-V』を観ている層も小中学生や高校生だろうから、オファーを頂いたときにいつもとは違うプレッシャーがありました。まず「そういう世代に響くものにしないとな」と思ったんですよね。

――その層に届けるために必要なのはどういうこととお考えに?

三島 まずは言葉。歌詞ですね。世代のことを考えると極力難しい言葉は使いたくないなと思って。最初にアニメを数話見て。『遊☆戯☆王ARC-V』には4つの次元が出てくるんで、まず「4つの次元ってどういうことだ?」とネットでファンサイトを見たりしたんですけど……これは前シリーズから見ないとちゃんと理解できないなと。でも歴史がある作品なのであまりにも数が多くて、さすがにそれを全部見る時間はなくて(笑)、基本的な用語をある程度頭に入れて、漠然とどういう作品なのかアウトラインを把握して作っていきました。曲はアップテンポで進んでいく感じが合うなと思ったので、そこから逸脱しないものを作ろうと。

――「great escape」は『進撃の巨人』の主人公のイメージで曲を作っていったとおっしゃっていましたが、「切り札」は『遊☆戯☆王ARC-V』の主人公・榊 遊矢の視点だけで歌われたものではないですね。世間一般のアニメのオープニング曲というとそこにフォーカスは当たりがちですが。

三島 やっぱり主人公ひとりに言及できるところまで理解が追いつかなくて、全体の雰囲気で書いていきました。そこに決め台詞や「お楽しみはこれからだ!」的なニュアンスを入れたり、少年の成長の物語だとも思ったので自分の原体験と重ねたところもありますね。

――「切り札」には「君こそが主人公だろう?」や「この未来は君のものさ!」「オーケー、君の思うままで。」など、人へ呼びかける、人の背中を押すような言葉が並んでいます。『遊☆戯☆王ARC-V』に出てくるすべての登場人物だけでなく、聴く人の背中を押す楽曲になっていますし、これは「YOUR SONG」スピリットに通ずるなと。

三島 『遊☆戯☆王』がない状態でも伝わるものを、というのを意識してる部分もありますね。曲の全部をどっぷり作品に漬け込む必要はないと思ったので、どこまで作品のことを歌うか、どこまで自分の言葉をミックスするかは悩みました。でもこのアニメのオープニングであるという意味は絶対にあるべきだと思うので、寄せるところは躊躇なく寄せて、そうではないところも作る、というのは考えましたね。

飯田 サビのワードの候補が2パターンあったんですよね。片方はもっと『遊☆戯☆王ARC-V』に寄ったもので、もう片方がそうではないもので、後者が完成形なんです。その後ライブで演奏するにあたって、お客さんがライブで聴いて「切り札」を聴くとしたらどうだ? という話し合いをレコーディング当日までやって、結果こうなったんです。

――TVサイズは歌詞の内容としても楽曲としても『遊☆戯☆王ARC-V』のオープニング曲ですが、フル尺で聴くとそれだけではない楽曲になっていると思います。そして今回も「YOUR SONG」に続き江口 亮さんがプロデューサーとして参加してらっしゃいますね。

三島 最初は江口さんプロデュースは「YOUR SONG」だけの予定だったんですよ。でも江口さんと電話してるときに「実は『遊☆戯☆王ARC-V』の話もあって」と話の流れで言ったら江口さんが「あ、じゃあそれも(プロデュース)やるわ! 一緒にやったほうがいいっしょ?」って(笑)。アニメは作画をしないといけないからアニメ制作チームから「まずTVサイズの89秒テイクを送ってくれ」と言われているときで。

飯田 「great escape」のTVサイズを作ったときは全部を作ってそこから切り出したらたまたま89秒にハマったんです。でも「切り札」はまず89秒サイズを作るところから始めて。江口さんはそういうところからびっちり考えられるし、アニメの楽曲を作ることは慣れている人だから助かりましたね。僕らだけでやってたら全体を作ってから89秒サイズを作ってたと思うので、そのやり方だと期日に間に合ってなかったと思います。

■ちょっとした音色の違いだけでヒーロー感が出た

――サウンド面ではcinema staffの要素と『遊☆戯☆王ARC-V』の要素がどちらも引いてない印象がありました。これまでのcinema staffにはない華やかさやスタイリッシュな空気があって聴きやすさもある。だけどバンドの躍動感は損なわれていない楽曲だと思います。人間で例えれば「いつもの前髪ある感じもすごくいいけど、オールバックもなかなか似合うじゃん!」みたいな意外性というか。

三島 ははは、嬉しいですね。その印象は江口さんの力が大きいかな。僕がセルフディレクションでやるとどうしても基本的に泥くさいモードになっちゃう(笑)。定位もいままでのcinema staffと全然違うから。いつもなら辻のギターはレフトから出てくるけど、「切り札」は真ん中から真ん中から聴こえたり、LとRを行ったり来たりしたり、結構フルレンジです。裏メロが鳴っているようなアレンジはいままでやってこなかったし。ずっとギターが主張していても、ボーカルと帯域が違うから歌の邪魔にもならない。俺はそういうことが全然できないので、やっぱり江口さんはすごいっすね。

飯田 沖さん(※筆者)がおっしゃった「華やか」というのは本当にそうだなと思って。俺らがいつも弾いてる感じのアルペジオも、音色が違うだけでものすごくきらきらしてヒーロー感が出るんですよね。ちょっとした音色の違いだけなのにここまで変わるのは面白いし勉強になって。

――ギターのフレーズはcinema staffらしいんですけど、音色が全然違うんですよね。さりげなく入るプログラミングもそうですが、うわもののインパクトが大きい。

辻 今回ギターはアンプも江口さんから全部借りて録ったんで、その影響もすごくでかくて。いい音になってると思います。「YOUR SONG」よりは自分の考えたフレーズが採用されてるんですけど、サビの裏メロを入れたのは普段やらないことだから新しいし、ライブでやるとなるとずっとギターを弾き続ける感じになります(笑)。でもそれも面白いと言えば面白いし。

三島 ちょっとだけ入ってるプログラミングのピロピロピローンみたいなのは……気付いたら入ってました。江口さんに入れられた(笑)。

久野 江口さんが急にiPhoneのアプリでピロピローンって音を作って、それをもともとあるオケに重ねて「あ、いいね!」って自分で一発OK出してました(笑)。

三島 江口さん俺らにまったく許可を取らないんですよ。「いいっしょー?」って言われて、俺は「ああ……はい」って(笑)。最終的なビジョンは見えてるうえで思いつきで行動するから、僕らにあんまり説明してくれないんですよね。本当なんでも速いんですよ。居酒屋選ぶのも5秒で決めるから(笑)。

――ははは! ベードラの音作りはどうでした?

三島 ベースは江口さんからの指示はなんもないです(笑)。

久野 スネアの音選びはこだわって、それから音を決めて叩いたら「いいね、かっこいいね! これでいこう!」って結構すんなり。リズム隊はあっという間に終わりました(笑)。89秒サイズを作ったときは江口さんの打ち込んだドラムのいいところを取って作って、フル尺のはみんなでアレンジして作ったのでいつも通りですね。最後のサビの前のドコドコ言ってるところだけ決め切れなくて、レコーディング当日に江口さんが「ドコドコした感じのドラム入れたらいいんじゃない?」と言うので、その場で考えてああなりましたね。「切り札」に関してはリズムに徹しました。

――「YOUR SONG」で「力を抜いて歌え」と言われていた飯田さんは?

飯田 「切り札」は歌詞がレコーディング当日まで決まらなかったこともあって歌いこめてなくて不安だったんですけど、江口さんはビジョンがはっきり見えている人なので曲に合わせてディレクションしてくれて。だから俺はそこに寄りかかって必死に歌うだけでした。

――いつもより声が笑っている印象がありました。

飯田 ああ……いつもより力が入ってないのかもしれない。

三島 俺がディレクションしてたら、正直このテイクではOKにしてないですね。

飯田 「YOUR SONG」の場合は曲調も曲調だから静かに歌っていけばいいというところもあるんですけど、「切り札」は勢いの大事な曲だから正直「ここまで抑えていいのかな? これどうなのかなー……?」という感じはあって。江口さんから「いつもの8割くらいで歌うのが飯田にとっていいポイントだよ」と言われるんだけど、俺としては「へぇー、そうなんだー……」って感じで、ちょっと心配になりながら歌ってて(笑)。でも出来上がったものは良かったので納得できました。

三島 声に余裕があるように聴こえますよね。飯田の声は低い声と高い声だと出る帯域が全然違うんで、そこを調整すると落ち着くんだなという新たな発見でもありました。でも俺は余裕のないものが好きですからね(笑)。

飯田 (笑)。江口さんはCDで聴くときにいちばんいいポイントを選んでくれたんじゃないかなと思ってます。これからこの方法でいこうかなと思うくらいでした。

――曲によって江口さんの方法を取り入れたら、また楽曲の差別化ができるかもしれないですしね。ところで今作を『SOLUTION E.P.』(=解決法)と名づけた理由は?

三島 これもギリギリで決めたんですけど……(笑)。『WAYPOINT E.P.』の流れで英語1語で大文字にはしたかったのと、この先出るであろうアルバムまで続いてる雰囲気を出したかったんですよ。「YOUR SONG」は「分岐点」のひとつで、「いままでのバンド感は損なうのでは?」という問題はここで1個解決です、ということですね。本当は「提示」という意味でググってたんですけど、いい言葉がなくて(笑)。「SOLUTION」という言葉はみんな馴染みもあるし語感もいいし。だから「分岐点」があって、提示のひとつとして「解決策」があって、いまは『SOLUTION E.P.』の完パケを目指しながらアルバムをどうしようかな……というのを考えているところなんです。

――なるほど。『WAYPOINT E.P.』と『SOLUTION E.P.』、もともと対にするおつもりで2枚のコンセプトEPとして密かに江口さんと共に制作していたのかなと思っていた方々も多そうです。

三島 ……違うんですよねえ(笑)。

久野 でも『バック・トゥ・ザ・フューチャー』ももともと第2弾を出すつもりで制作してなかったらしいですからね。『WAYPOINT E.P.』と『SOLUTION E.P.』もそういうことっす(笑)。

三島 そういうことっす! ひいては『望郷』からここまで全部つながってますから。

――cinema staffは目の前の課題をひとつひとつ消化して血肉にして、歴史を全部背負って活動してるバンドですから、前身バンドのREALから全部つながっていると思いますけどね(笑)。

全員 ははは!

久野 cinema staffはめちゃくちゃ伏線多いんで(笑)。

三島 まだ回収しきれてないね(笑)。

■「deadman」が現在のcinema staffのテンション

――新曲「deadman」はcinema staffらしい楽曲だと思いました。ここまでマイナーのメロディは久し振りですね。歌詞も内省的なので、空気感的には2009年にリリースされた『Symmetoronica』に近いものを感じました。

三島 あ、本当ですか? cinema staff史上最も暗い『Symmetoronica』に(笑)。でもメロディもマイナーで切ない感じで、曲を作るうえで「初期衝動の復興」みたいな考えはありましたね。いままでの歴史を損なっていないという提示ではあります。

久野 実はこの曲は『blueprint』に入ってたかもしれない曲なんですけど、俺だけがどうしてもアレンジが不完全だな思って、わがままを言ってお蔵入りにしたんです。それで忘れ去られてたんですけど……(笑)、今回のEPに何を入れるか話し合っているときにうちのA&Rが「あの曲かっこよかったけどな」と言ったことがきっかけで掘り起こして。

――この曲のプリプロは10月下旬になさっていましたよね。このインタビューが行われているのは11月18日ですが、11月14日にこの曲のMVをプリプロの音源で撮影なさって、11月16日にc/wの2曲をレコーディングして、このインタビューが終わったあとに2曲の最終調整を行うと(笑)。

三島 めちゃくちゃですよ。ここ1、2ヶ月は本当にものすごいスケジュールで……ヤバくなかったことがないです(笑)。先月のこと、あんまり憶えてないんですよね……。

久野 10月下旬から何個かヤバい山があって、それをなんとか乗り越えて今日です(笑)。いまは谷で次の山を見ているところですね……。

飯田 さっき「deadman」のMVが監督さんから上がってきたんですけど、音はプリプロなんで曲が完成したら差し替えます(笑)。

――(笑)。ということは「deadman」が最新のcinema staffですね。

三島 俺個人としては「deadman」が現在のcinema staffのテンションだと思ってますね。アレンジメントは特に。

久野 「YOUR SONG」と「切り札」で江口さんと一緒に制作をして、アレンジの方法論が少し盗めたというか、こういう方法もあるんだ!ということにたくさん気付けたので、その得たものでアレンジをしたらこの曲もめっちゃ良くなるんじゃないかなと思って。それでスタジオで僕が前に納得いかなかったところに対して「こういう感じでどう?」と提案して、みんなでスタジオで作っていったらこのかたちに収まった感じですね。

辻 これもギターをめちゃくちゃ弾いてる曲で、サビ裏のメロディは三島が「こういうのつけて」と頼んできたものなんですよね。僕だったらこういうことはやらないので、それは江口さんとの作業の流れで出てきた案だと思います。「こういうものがあったほうがいいんだな」って。

――江口さんとはたった2曲の作業だったとはいえ、受けた影響は大きい。

三島 全部が全部江口イズムでやることはないと思うんで、これからはいいとこ取りでやっていきたいなと。アルバムにc/wこの2曲のテンションの曲を増やしたいなー……バキバキなところも見せたいなと思っていて。バランス良く取り入れて、いままでよりもいろんな人に伝わる、全方位に広げたバラエティ豊かなものにしたいと思ってるんです。

――「wildcard 2」は2014年にリリースされた『残響record compilation vol.4』に収録された「wildcard」のリアレンジ。

三島 リアレンジというよりは、ずっと曲の頭を変えたいと思ってたんです。そこが変わればだいぶ違う印象になるから、リフは俺が考えて辻に弾いてもらって、あとは思いついたことを全部採用していって。

久野 もともとの「wildcard」も残響の河野社長の「『残響record compilation vol.4』に入れる用の新曲を出せ」という無茶振りで作ったので(笑)、そのときも時間がなくてバーッと出したので、メンバーそれぞれが「もっとこここうしたいな」と思う部分があったので、そこを変えました。自分たちのCDに今回入ることでライブでもやりやすくなるなと思ってます。

――『SOLUTION E.P.』の3曲はすべて「ソリッドかつエッジーなバンドサウンド」というカラーを持っているけれど、作り方はまったく異なるんですね。

三島 ああ、そう言われてみるとそうかもしれませんね。

久野 「deadman」は試しに俺らなりに江口さんのやり方を取り入れてキャッチーにしてみるという方法論だし、「wildcard 2」は逆にいままでのコアな部分というか、好き勝手やって「俺らがかっこいいと思えばそれでいい」という基準で作ったものですね。

■「これだけ動いたなら結果が出るだろう!」と思うほど動いた1年になった

――2015年は『blueprint』で青写真を描き、それを引っさげたワンマンツアーを行い、それ以外にも膨大な数のライブを行い、趣向の異なる2枚のEPをリリースするためにものすごいスピードで駆け抜け、12月には豊島公会堂で初のホールワンマン「waypoint 2015」を控えるcinema staff。皆さんにとって今年はどんな年でしたか?

三島 個人的に去年は「東京で音楽をやっていくぞ」「これからバンドをどうしていこう、こんなふうになりたいな」という漠然としたイメージができた、種を撒いて土壌を作ることができたと思っていて。今年はそれを実現させるために必要なことにトライしてみたので、やるべきことが多かった年でしたね。その結果選択肢も増えたと思うし、去年がホップなら今年はステップの年だったなと。このスケジューリングは音楽でメシを食えていることや、いろんなことを並行してやれるんだという自信にすごくなったので、すごく収穫が多かったですね。考え方も活動もずっと同じようにはいられないと思うんです。そのなかでベストを尽くせてるんじゃないかと思いますけど、これがベストだったかどうかわかるのはこれからですね。でも納得して行動できています。

――2014年がホップで、今年がステップなら、来年はジャンプということで。

三島 ……ねえ。ほんとどんだけそれを言われ続けているか(笑)。

飯田 来年は変わる、来年が勝負だと毎年思ってるんですけど、今年は「これだけ動いたなら結果が出るだろう!」と思えるくらい動いた年になりましたね。「無駄と思える事も全て繋がっていた。」という「シャドウ」の歌詞のような年になったと思います。もちろんこれは言葉の綾で今年の活動を無駄と言っているわけではないんですけど、とにかくいろんなことをやって来年見えてくるもののためにひた走る年だったなと思います。

三島 そうだね。僕個人としてはあんまり結果のことは考えないようにしていて。僕はそんなにマネジメント能力がないので、バランスを取ることはメンバーに任せてます。僕は真摯にいい曲を作ることに向き合って。そういう状態にいられてるのは本当にありがたいですね。

久野 僕はバンドやりたいなと思ってバンドを始めてから、ずっとがむしゃらにバンドを続けてきて気付いたらいまだった、という感じだったので、2015年は「なんでcinema staffがやりたいのか?」「果たして俺はドラムが叩きたいのか?」というのを意識的に考えることが多かったです。それがちゃんとわかれば次にどうしたいのかが見えてくるかなと思って。まだその途中、という感じですね。

辻 僕もみんなと同じなんですけど……ポニーキャニオンの担当の人をすごく信頼しているんで、自分がNGにしていたことも1回やってみようと。それで広げられたことももちろんあるんですけど、「やっぱりこれはだめやろ」と思うことはいっぱいあるし。そこをどうしていくかは今後の課題ですね。

――「waypoint 2015」のイメージはだいぶ出来てきましたか?

三島 ちょっとずつ、やっと。映像が入ることにもなったし、セットリストもなんとなくプランが出て。今日RECがひと段落するので、やっとホールワンマンに向かえるかなと。来週はここに向けての練習時間もあるので。

――最近ライブの本数もかなり多いので、身体もライブモードのままホールワンマンには向かえそうですね。

飯田 そうですね。制作終わってからライブをすると久し振りになっちゃうのもあって身体が動かないことがあったりもするんですけど、このままの感じでいけそうです。

三島 やっぱり緊張感が続いてるんですよね。僕ずっと風邪引いてないんですよ。だからやっと落ち着ける年末あたりが怖いですね(笑)。でもそこまで緊張感を切らさず走り抜けて、来年からはまたがっつり制作をしていく予定です。今年の後半はタイアップ楽曲の制作だから〆切とかの制約も多かったので、来年はもっといままでの雰囲気で作れるんじゃないかな。……でもまずは今年を乗り切ることですね。そしたらまた次が見えてくるかなと思っています。